独立開業の実現には資金が必要で、多くの方にとって開業資金をどのように調達するかが最大の課題となります。
開業資金は自己資金で賄うのが理想ですが、自己資金が少なく資金の支援を受けて開業を検討されている方も多いです。
そこでこちらでは、どのくらいの人が開業資金の支援を受けているのかをはじめ、メリットや具体的な資金調達方法、気をつけるポイント、おすすめの支援サービスや開業方法までご紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。
開業資金の支援を受ける人は70%以上
独立開業を検討している方の多くが、開業資金の支援を必要としています。
実際、日本政策金融公庫の「2023年度新規開業実態調査」によると、開業資金は支援を受けて調達したという人は全体の70%以上いることが分かりました。
開業時の資金調達額が平均1,180万円と高額であることからも、自己資金だけでは不十分なケースが多いことが伺えます。
日本政策金融公庫『2023年度新規開業実態調査』を参照
開業資金の支援を受けるメリット
開業資金の支援を受ける人が多いことは、さまざまなメリットが得られることも影響しています。
主なメリットは以下の通りです。
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短期間で調達できる
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工数削減できる
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開業資金以外の相談もできる
短期間で調達できる
開業資金の支援を受けることで、短期間で資金調達が可能になります。
支援を受けないということはすべて自己資金で賄うということになりますが、毎月決まった金額を貯金するにしても、最低限の生活費は確保しておかなければいけません。
このようにコツコツ貯金していくケースがほとんどなので、目標の開業資金の金額によっては何年もかかってしまうことでしょう。
開業資金の支援を受けるのであれば、依頼をして承諾をもらう、申し込みをして審査を通過するなどすれば、1ヵ月くらいで調達できる可能性があります。
また、開業資金の調達方法もさまざまで、自身に合った方法を選ぶのも一苦労です。
専門的な支援サービスを活用すれば、さらに短期間で必要な資金調達ができる可能性が高まります。
工数削減できる
工数削減ができるのも、開業資金の支援を受けるメリットの一つです。
開業資金を集める際は、事業計画を立てたり、資金調達先との調整・交渉をしたりする必要があり、多くの時間・工数がかかります。準備のために慣れない書類作成を行い、分からない用語があればその都度調べなくてはなりません。
開業資金の支援をしてくれるところのなかには資金調達の準備をサポートしてくれる場合もあり、開業資金調達のための支援を行っているサービスもあるので、起業家がやるべきほかの仕事に時間を充てることができます。
ただし、資金調達に必要なプロセスをすべて任せられるわけではないので、起業家自身がやるべきことと、専門家に任せるべきものを明確にして準備を進めることが大事です。
開業資金以外の相談もできる
開業資金以外の相談ができるのも、開業資金の支援を受けるメリットと言えます。
どのようなところから開業資金の支援を受けるかによっても異なりますが、開業後の事業運営や返済計画、採用、ビジネスアイデアなどを相談することも可能です。
さまざまなことが相談できればこれから取り組むべきことが明確になり、事業開始後もスムーズに経営できるでしょう。
資金調達支援サービスのなかには、開業後の経営コンサルティングや助成金・補助金の申請サポート、税金関連の対応など幅広いサービスを提供するものもあります。
客観的な視点でアドバイスをもらうことができるので、特に初めて自身で開業するという方にとっては開業時の心強いパートナーになってくれるはずです。
開業資金の支援を受ける方法
開業資金を支援してもらうためには、いくつかの方法があります。
それぞれの特徴を理解して、自身にとって最適な資金調達方法を選びましょう。
方法 | 特徴 | おすすめ度 |
親族や友人、知人からの援助 |
・利息や返済期間などの自由度が高い ・返済状況によって関係性悪化の可能性も |
★★☆ |
銀行や日本政策金融公庫などの金融機関の融資 |
・高額な資金調達が可能 ・利息が発生する |
★★★ |
地方自治体の制度融資 |
・低金利 ・上限金額があり、融資まで時間がかかる |
★★☆ |
企業や個人投資家からの出資 |
・返済不要の高額な資金調達が可能 ・経営の自由度が低下する |
★★☆ |
助成金や補助金の活用 |
・返済不要 ・細かな条件があり、費用を支払った後に支給される |
★★☆ |
クラウドファンディング |
・広範な支援者から少額ずつ調達 ・ビジネスの魅力が重要 |
★★☆ |
親族や友人、知人からの援助
開業資金を支援してもらう方法の一つに、親族や友人、知人からの援助があります。
金額や利息、返済期限、返済方法などを当事者同士の話し合いで決めていくことが多いので、資金調達方法のなかでも自由度が高い方法です。
また、親しい人々からの援助ということもあり、返済へのプレッシャーが少ないことも魅力ではないでしょうか。
一方で、事業が失敗した場合のリスクを身近な人に負わせてしまうこと、返済が滞った場合に関係性が悪くなってしまうことには注意が必要です。
銀行や日本政策金融公庫などの金融機関の融資
銀行や日本政策金融公庫などの金融機関から融資を受けるのも、開業資金を支援してもらう方法の一つです。
金融機関から融資を受ける場合は返済と利息の支払いが発生しますが、一度に支援してもらえる金額が高額で、経営への参入リスクもなく自由度の高い経営を行えます。
支援を受ける金融機関の選択肢としては、都市銀行や地方銀行などの民間金融機関と日本政策金融公庫や商工組合中央金庫(商工中金)などの公的金融機関があり、開業資金の資金調達方法としては、日本政策金融公庫の「新規開業資金(旧:新創業融資制度)」の活用がおすすめです。
「新規開業資金」は新たに事業を始める方(または事業開始後おおむね7年以内)を対象にした融資制度で、過去の実績などが問われやすい民間銀行の融資よりもハードルが低いと言われています。
また、自己資金の要件が定められておらず自己資金がゼロ、または少なくても申し込みが可能で、低金利や無担保・無保証人で融資を受けられるケースがあることもおすすめの理由です。
以下で「新規開業資金」の主な概要をご紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。
対象者 | 新たに事業を始める方または事業開始後おおむね7年以内の方 |
用途 | 新たに事業を始めるため、または事業開始後に必要とする設備資金および運転資金 |
融資限度額 | 7,200万円(うち運転資金4,800万円) |
返済期間 |
設備資金:20年以内(うち据置期間5年以内) 運転資金:10年以内(うち据置期間5年以内) |
利率(年) |
有担保:1.35~3.15 無担保(税務申告2期未完了):2.60~3.80 無担保(税務申告2期完了):2.35~3.55 |
担保・保証人 | 新たに事業を始める方や事業開始後に税務申告を2期終えていない方は原則、無担保・無保証人で利用可能 |
「新規開業資金」に関しても融資を受けるには審査が必要で、限度額まで融資を受けられるとは限らないので、その点に注意しながら事業計画書作成などの準備を進めるようにしましょう。
日本政策金融公庫『新規開業資金』を参照
地方自治体の制度融資
地方自治体の制度融資は、地域の中小企業や個人事業主が事業に必要な資金を調達しやすくするために設けられた融資制度です。
都道府県や市区町村が、信用保証協会と金融機関と連携して資金調達をサポートします。
本来の銀行融資の場合、事業実績がなく信頼度も低いこれから創業する方にとってはハードルが高いのが現実です。
制度融資は信用保証協会が融資を受けたい人の債務を保証することで金融機関からの融資を受けやすくする制度なので、実績がなくても支援を受けられる可能性があります。
さらに地方自治体が利息の一部を負担してくれ、一般的な銀行融資より低金利で融資を受けることが可能です。
ただし複数の機関とのやり取りが必要なため、融資までに時間がかかることがある点に注意しましょう。
地方自治体によって対象者や条件、限度額などが異なりますが、東京都の場合はこれから新たに創業する方を対象に限度額3,500万円の融資を行う「都創業融資」を設けています。
東京信用保証協会『都創業融資(略称:創業)』を参照
企業や個人投資家からの出資
企業や個人投資家などから出資を受ける方法も、開業資金の支援を受ける方法です。
出資を受けるメリットは、融資とは異なり、調達した資金を返済する必要がないこと。
高額な出資を受けられる可能性もありますが、返済不要の代わりに出資金に対するリターンが必要となり、株式との引き換えであれば経営参画や配当金の支払いなどが発生します。
また、企業や個人投資家から資金調達をすることで、資金以外にも経営ノウハウや出資元が持つ人とつながれるということもメリットです。
数多くの出資をしてきた投資家の目線から開業時に経営支援や事業へのアドバイスを受けることで、スムーズな事業立ち上げとともに事業の成功確率を高めることができるでしょう。
たとえば、販路拡大を検討する際に、出資元の人脈を活用するケースなどが想定できます。
経営が上手く行かないと資金を引き揚げられるリスクもありますが、開業初期に経営ノウハウを学んだり、見込み顧客をはじめ、経営者などさまざまな人脈を得られるのは大きなメリットと言えるでしょう。
助成金や補助金の活用
助成金や補助金は、国や地方自治体が実施している支援制度です。
支援を受けるには審査に通ることが必要ですが、出資と同様に原則返済が不要であることが大きな特徴。
人材の雇用や販路開拓など活用できる選択肢が幅広く、もちろん創業のための開業資金に活用できる助成金・補助金もあります。
比較的利用しやすい支援方法ですが、助成金・補助金は基本的に費用を支払った後に支給されるので、創業前に資金調達する方法としては適していません。
また、費用の一部を助成・助成する制度なので、使った費用すべてを賄えるわけではないことを覚えておきましょう。
クラウドファンディング
インターネット上で不特定多数の人々から少額ずつ支援を受けるクラウドファンディングも、開業資金の調達方法としておすすめ。
金融機関からの融資や企業からの出資と異なり、自己資金がゼロまたは少ない方でも資金調達しやすいです。
自分自身や商品・サービスに魅力を感じて支援をしてもらえる点が特徴で、出資者は将来の顧客になる可能性が高く、事業の魅力を発信してくれる存在にもなり得るでしょう。
クラウドファンディングは調達金額を自由に決められ、クラウドファンディングの種類によってリターンを提供しなくてはいけませんが、融資や出資よりも短期間で資金を集められるケースも多いです。クラウドファンディングの専用サイトも豊富にあるので、気になる方はぜひ確認してみてください。
開業資金調達の支援をしてくれるサービス4選
開業資金の支援を受けたいけど、準備や手続きなどが不安という方も多いでしょう。
そのような場合は、開業資金の調達を支援してくれるサービスを活用するのも一つの方法です。
ここからは、代表的な4つの支援サービスをご紹介します。
1.民間サービス
一つ目は民間企業による資金調達支援サービスです。
事業計画の相談から資金調達先の選定、融資交渉など資金調達に関するサポートを幅広く受けられ、スタートアップに特化したサービスやセミナー開催、経営者同士のネットワーキングのサポートなど資金調達以外のサービスを提供しているケースもあります。
こちらでは、3社のサービスを厳選してご紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。
スタートアップスタジオ協会
スタートアップビジネスにおいて資金調達に限らず、新規事業やアントレプレナー教育、業界や人材のネットワーク作りなどの多岐に渡る支援を行うサービスです。
資金調達だけでなく、開業時のさまざまな不安や悩みを協会会員と共有し、解消することができるでしょう。
株式会社RSTANDARD
バックオフィスに関わる業務支援、人材育成などさまざまなサービスを提供し、事業の一つに財務支援サービスを設けています。
資金調達においては開業時から企業の各ステージに合わせてサポートを受けられるとともに、開業時に不足しがちな会計、人事、労務など多岐に渡る支援をまとめて相談することが可能です。
経営サポート株式会社
開業をはじめとした資金調達から、事業承継やM&Aなどの事業再生・経営健全化など、中小企業経営におけるさまざまな課題を専門に扱う経営コンサルティング会社です。
特徴は代表に信用金庫での勤務経験があること。
経営コンサルティングだけではなく融資をする立場の金融機関での就業経験があり、融資する側とされる側の目線を理解したコンサルティングが期待できます。
開業資金の支援にとどまらず、助成金・補助金などの申請に関してもサポートをしており、開業時以外にも心強い支援が期待できるでしょう。
2.国や自治体のサービス
開業資金調達の支援は、国や自治体も積極的にサービスを展開しています。
国や自治体が提供するサービスは無料で受けられるものが多く、ほかのサービスに比べて相談のハードルが低く設定されているのが特徴です。
国や自治体が提供する2つのサービスをご紹介します。
商工会議所
商工会議所では起業・創業サポートを実施しており、資金調達だけでなく、経営上のさまざまな課題に対してサポートを行っています。
必要に応じて税理士などの専門家の紹介を受けられますが、必要書類の作成などは自身で行う必要があるので注意が必要です。
よろず支援拠点
よろず支援拠点は中小企業庁が管轄する経営相談所で、中小企業診断士や税理などの専門家に直接相談できるサービスです。サービス内容は助言・アドバイスまでとなり、事業計画の作成や融資申し込みの書類作成・準備といったサポートを受けることはできません。
上記のサービス以外に自治体独自に開業資金調達の支援を行っています。東京都では独自に「女性・若者・シニア創業サポート事業」という創業支援を提供しており、女性や39歳以下の若者、55歳以上と制限はあるものの、融資とその後の経営サポートを行うプログラムが用意されています。
所属する自治体にどのような独自プログラムが用意されているか、一度確認してみると良いでしょう。
3.金融機関
融資を受ける金融機関に直接、資金調達の相談も可能です。
先ほどご紹介した「新規開業資金」を提供する日本政策金融公庫や、中小企業支援に力を入れる銀行・信託銀行・信用組合では、開業相談の窓口を設けていて直接相談ができます。
開業資金調達で人気のある日本政策金融公庫では無料で創業前支援を行っており、電話やオンライン・対面のほか、「創業者向け 起業家応援マガジン」としてメール配信サービスも提供している点が特徴です。
ただし創業融資は金融機関にとってリスクもあるので、面談を断られることもあります。ゼロから相談するよりも、事業計画などある程度準備をしてから面談を希望すると良いでしょう。
4.士業や専門家
中小企業診断士、税理士、行政書士、公認会計士など士業でも資金調達の支援を行っています。
ただし、士業全員が資金調達に精通しているわけではないので、ホームページや口コミ、民間企業や国、自治体のサービスを通じた紹介などを参照しながら、適切な士業や専門家を選びましょう。
税理士、行政書士、公認会計士などの士業は開業資金調達以外でも、税金面や登記、社会保険手続きなどの支援を依頼できるため、それぞれの士業の得意分野を確認しながら相談してみることをおすすめします。
自己資金ゼロでも開業資金の支援は受けられる?
結論から言うと、自己資金ゼロでも開業資金の支援を受けることは可能です。
今回ご紹介した親族や友人、知人からの援助は当事者同士の合意があれば支援を受けられ、助成金・補助金は自己資金の要件がないので、そのほかの条件に該当していれば支援を受けられます。
また、企業や個人投資家からの出資やクラウドファンディングは自己資金の金額より事業の魅力や将来性が重視されるので、自己資金ゼロでも支援してもらえる可能性があるでしょう。
ただし、特に金融機関からの融資や地方自治体の制度融資に関しては自己資金の有無が審査や金額を左右する可能性が高いので、ハードルが上がります。
同じ金融機関でも公的金融機関の日本政策金融公庫であれば自己資金ゼロでも利用しやすいので、自身の状況に合わせて支援してくれるところを選ぶことが大事です。
開業支援金の支援をしてもらう際に気をつけるポイント
開業資金の支援を受ける際には、いくつかの注意点があります。
以下のポイントを押さえて、しっかりと準備を進めましょう。
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融資を受ける場合は返済計画も必須
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助成金・補助金は支給タイミングに要注意
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自己資金は可能な限り用意しておくことも大事
融資を受ける場合は返済計画も必須
開業資金として融資を受ける場合、返済計画を立てることが必須です。
融資を受けた後は毎月の返済が必要となり、事業が安定するまでのキャッシュフロー管理が重要となります。
返済計画がしっかり立てられていると、融資も受けやすくなるでしょう。
具体的な返済スケジュールを作成し、無理のない計画を立てることが重要です。
助成金・補助金は支給タイミングに要注意
助成金や補助金は返済不要の資金ですが、支給タイミングに注意が必要です。
基本的には費用の支払い後に支給されるので、タイミングを見誤ると資金繰りに影響を及ぼすことがあります。
また、申請手続きが煩雑な場合もあるため、早めの準備と計画が大事です。
自己資金は可能な限り用意しておくことも大事
自己資金が少ない場合でも、可能な限り自己資金を用意しておくことが大切です。
自己資金があることで事業への信頼性も高まり、支援を受けやすくなります。
また、自己資金がある程度あることで、急な出費にも対応しやすくなるので安心です。
まとめ
開業資金の支援を受けることで自己資金が少ない場合でも安心して事業をスタートすることができ、リスクを軽減しながら事業の成長を目指すことが可能です。
支援を受けて開業資金を調達するにはさまざまな方法があるので、それぞれのメリット・デメリットを理解した上で自身に合った開業資金の調達方法を選び、計画性を持って進めるようにしましょう。
開業資金を支援してもらいやすいおすすめフランチャイズ!
開業資金の支援を受けてスムーズに事業をスタートしたい方には、フランチャイズがおすすめです。
開業資金の調達をサポートしている本部もあるので、自己資金が少ない方や資金調達に不安をお持ちの方も安心して事業を始めることができます。
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融資や資金調達のサポートも受けられるので安心です。
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本部に創業資金や融資の相談ができるので、安心して開講準備が進められます。
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